技術解説
冬季山岳地における太陽光発電パネルへの
防氷雪対策の効果
【はじめに】
 冬季、降雪や着雪などが発生する山岳地において太陽光発電を行おうとするとき、太陽光発電パネル表面に付着する氷や雪が問題になってきます。当社では「太陽光発電パネル表面に付着する氷や雪の脱落を促進すること」を目的として、パネルの裏面に加工を施した場合の評価試験を、「着氷防止キット」と「断熱材」の取付の2種類の方法で行いました。
 写真および発電量のデータをみると、加工をしたものの方が着氷の脱落が早く、効果が現れている例が見られました。パネルの表面温度についても、夜間は加工の有無によって温度に変化はないものの、日照時は加工を施したものの方が、表面温度が高くなっていることが判り、2種類の加工を比較すると、断熱材の方が、着氷防止キットよりも平均温度が高くなっていました。
 裏面加工を行えば、着氷雪が脱落しやすなり、発電電流を大きくできることが期待できます。

【2種の裏面加工の原理】

   @「着氷防止キット」  A「断熱材」(原理と施工写真は、以下の表参照)
加工方法・原理 施工写真(クリックすると、大きい写真がでます。)
@「着氷防止キット」(カナダT社製)
 太陽光発電パネル裏面を黒くすることにより、太陽光発電の雪面反射による輻射熱を吸収させ、透明板で密閉した空気層により断熱し、パネル表面の温度を上昇させ、着氷の脱落を促進させる。
A「断熱材」
 太陽光発電パネル裏面にウレタン状の断熱材を取り付けることにより、パネル表面から入射した太陽光発電の輻射熱が裏面から熱放散するのを防ぎ、パネルの表面温度を上昇させ、着氷の脱落を促進させる。

 上記2種類の裏面加工を、太陽光発電パネル5セット(20枚)中の1セットづつ(計2セット)に施工し、残りは比較のため加工をしない通常の状態にして設置。(太陽光発電パネルの仰角は全て90度)


【方法】

以下の3つの方法により、裏面加工の効果を確認  
  1. 監視カメラによる撮影(1日1回)
  2. 発電電流の測定
  3. パネルの表面(裏面)温度の測定(1997年2月以降)

監視カメラ
(着雪を防ぐため、ヒーターにより加熱)

【評価試験期間および場所】
 1996.12月〜1997.4月まで実施。(志賀高原内標高2300mの地点)

【結果と考察】
T.写真および発電量による比較

加工をしたものの方が着氷の脱落が早く、効果が現れている例が何例か見られた。以下にその中の1例を示す。
『12月19日の例』
 前日まで着氷が太陽光発電パネルの全面を覆っていたが、19日の朝から裏面加工したものの効果が現れ、 正午前にはかなりの部分の着氷が脱落した。20日朝にはより顕著となった。

12月19日 12月20日
(写真をクリックすると、大きい写真がでます。)
参考⇒パネル表面着氷(雪)が解けて脱落している様子。(クリックして下さい)

 この効果は発電量のデータにも見られる。図1はパネル加工有りと無しの1セット当たりの発電電流のグラフであるが、 19日11時頃から加工有りの発電電流が加工無しを上回り、20日には1日中大きな差が表れた。

U.パネル表面温度による比較
 図2に、各太陽光発電パネルの時刻毎の表面温度を示す。これによると各時刻の平均温度は、夜間は加工の有無によって温度に変化はないが、日照時は加工を施したものの方が、表面温度が高くなっていることが分かる。
 加工有りの2種の方法については、断熱材の方が、着氷防止キットよりも平均温度が高くなっていた。

V.考察

  今回は着氷雪の脱落をより促進するためパネルの角度を全て90°(垂直)にして実証試験を行いましたが、裏面加工を行えば、パネルの仰角を小さくしても(60度等)脱落しやすなり、結果的に発電電流をより大きくできることが期待できると考えます。
(1999年度雪氷学会全国大会にて発表。)

 

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